PTLP Japan お問い合わせは
または電話 048-795-7345
概要
Q&A
脱酸プロセス
脱酸スプレー
脱酸とは?
より詳しい情報については下記のホームページ(英文)をご参照下さい。www.ptlp.com

ブックキーパーQ&A

以下はブックキーパー脱酸プロセスについてよくお問い合わせを受けるご質問と回答です。もしもこれ以外にご不明な点がございましたら弊社までご連絡下さい。

1. ブックキーパー脱酸法とはどのようなものですか?
ブックキーパー脱酸法はスローファイヤー(酸性劣化)に瀕するあらゆる形態の紙資料を対象にした中和・保存処理技術です。ブックキーパー脱酸法では無害なアルカリ・バッファー(緩衝剤)を紙の中に残留させ、劣化スピードを速めながら紙を脆弱化させる原因となっている酸を、このバッファーで安全に中和します。

バッファーとなるのはアルカリ化合物(酸化マグネシウム)の微粒子で、この粒子が不活性な液体(無害のフッ素化合物)の中に分散(懸濁)しています。この分散液に紙を浸漬、あるいは液を紙に噴霧し、この液体を気化させると、酸化マグネシウムの粒子だけが紙の中に残ります。この液体には水が含まれていないので、繊維が膨潤したり、紙が波打ったり、ごわつくようなことがありません。

ブックキーパー脱酸法では前処理の乾燥や、後処理の紙の再調湿、ガス抜きといった工程が不要です。資料を少量ずつのグループに分け、トリーターの中で処理液に浸します。液が紙に均一に接触するように、紙は処理液の中でゆっくりと動きます。この間、トリーター内では図書から出る塵や埃を取り除くとともに、処理液の正確な濃度を監視、維持し続けています。処理が終わると液が抜かれ、さらに紙に残留している液を気化させ、リサイクルします。基本的には1回の処理に約2時間を要します。なお、紙に含まれる水分が処理によって影響を受けることもありません。

正確な品質管理を行なうため、紙資料は一点ずつ、あるいは少グループ毎に処理します。処理後の最終的なpHの値は紙の組成によって異なりますが、7.0から10.0で、通常は8.0-9.5の範囲です。また、処理によって適量のアルカリ性物質が紙に加えられ、酸性劣化を予防するアルカリ・リザーブとなります。一般的なアルカリ・リザーブは炭酸カルシウムの質量に対して1.5%、1キログラムに対して300ミリeq.(当量)が与えられます。

処理後、脱酸剤の酸化マグネシウムの粒子は数週間かけて空気中の水(分子)と結合し、無害のアルカリ・バッファーである水酸化マグネシウムに変化します。この粒子が緩衝材となり、紙中の酸を着実に吸収し、中和します。水酸化マグネシウムの粒子は紙が寿命を迎えるまで酸を吸収し続けます。また、通常の保管状態なら脱酸処理を繰り返す必要はなく、一度処理すれば恒久的な効果があります。


2. 処理は効果的ですか?
ワシントンの米国議会図書館(The Library of Congress)、アトランタのIPST (The Institute of Paper Science and Technology)、ローチェスターのThe Image Permanence Institute、ベルギーの王立芸術保存協会(The Institut Royal du Patrimoine Artistique)、オランダのTNO研究センター、スイスのベルン高等技術学院、全米切手収集協会(州立大学)は処理済の紙資料の検証実験および未処理のサンプルとの比較実験をそれぞれ独自に実施してきました。これらの強制劣化実験ではブックキーパー脱酸法によって紙資料の使用寿命が少なくとも3-5倍延びる効果があることが証明されています。強制劣化は自然劣化の結果を必ずしも正確に再現していませんが、テストの性質上、効果が低減する傾向があることから、紙資料の延命効果は、強制劣化の予想以上と思われます。


3. 処理の結果はどのようなものですか?
紙中に残留するアルカリ粒子は極めて小さく、平均的な粒子の大きさは約1マイクロ・メートルです。このような微粒子の製造技術は、通常粒子の吸収表面積の約250倍といった非常に大きな内部表面積を実現しています。バッファーとなる粒子の表面積が増すと、粒子が紙のセルロース繊維に浸入・付着しやすくなり、結果的に繊維内の酸を吸収・中和する化学的スポンジのような役割を果たします。

紙中の酸は自由に移動しますが、この現象は酸性の紙が、酸性でない紙に接している場合、接している部分にダメージを与えていることで分かります。このような現象によって、酸性紙を保管しているアルカリ性に調製されたフォルダーやボックスは、わずか数年で酸性になってしまいます。通常の保管状態では、酸はセルロースの繊維に非常にゆっくりと反応しますが、アルカリ性の資料に対してはより敏速に反応します。ブックキーパー法はこのような反応速度の違いを利用しています。つまり紙中で酸はセルロース繊維の間を移動しますが、この時に吸収性の高いアルカリ粒子が素早く酸を吸収し、セルロース繊維と反応して劣化させる前に、酸を中和します。


4. どのようなものを処理できますか?
ブックキーパー脱酸法は製本および非製本の文書、印刷物、手書き原稿、新聞、書籍、書簡、封筒、切手、紙収集品、パンフレット、地図や版画といった一枚もの資料など、ほとんどの紙資料に適しています。処理の工程では溶剤を一切使用しないため、インク、接着剤、表装、革、プラスチック、金属、繊維などに転移、毛羽立ち、緩み、または損傷を生じることがありません。

ブックキーパー脱酸法の工程が資料に大きな負担をかけることはありませんが、処理する紙資料は安定した状態で、注意深い取り扱いに耐えられなければなりません。脆弱すぎて取り扱うことが出来ないものや、修理が難しい資料は、通常は脱酸処理の対象といたしません。


5. 写真でも安全ですか?
Image Permanence Instituteによる脱酸処理後の紙と写真を接触させるテストでは、写真活性度試験(Photographic Activity Test: PAT)の要件を完全に満たすものであると判断されました。ブックキーパー脱酸法は写真向けに意図されておらず、写真への効果はありませんが、ブックキーパー脱酸法によって悪影響が生じることもないので、写真を処理済み紙資料と一緒に安全に保管することができます。

注)古典写真(鶏卵紙のように本来がアルカリ性)の場合、脱酸による影響を受ける可能性がありますので、ご注意下さい。


6. 色材やインクにも安全ですか?
ブックキーパー脱酸法では溶剤や水を使用しません。いくつもの独立機関が1870年から今日までの何百にもおよぶインクや紙のサンプルをテストしてきましたが、処理液によるインクまたは色材の溶出、にじみは見られませんでした。ごく稀な場合、酸性からアルカリ性へのpHの変化に伴って色合いに影響が出るものがあります。しかし、pHに敏感な色材であっても、紙が水に濡れる、あるいは非常に高湿度の状態にならない限り、脱酸処理自体の影響を受けることはほとんどありません。但し、ブックキーパー脱酸法はpHの上昇によって影響を受けるおそれがあるブルー・プリントや、その他の類似した紙資料への使用は勧めておりません。

注)酸性染料が用いられている場合、紙のpH上昇に伴って色彩に変化が生じる可能性がありますので、ご注意下さい。


7. 光沢のある資料やフィルム封入された資料には使用できますか?
プラスチックなど、吸収性のない資料を処理しても問題はありませんが、効果もありません。ブックキーパー脱酸法の脱酸剤はフィルム封入された資料のプラスチック塗工層に浸透しないからです。このような吸収性のない資料を処理すると、アルカリ性物質が表面に膜をはったようにうっすらと残留しますが、柔らかく乾いた布で拭き取ることができます。また、ブックキーパー処理は塗工紙を使用した資料に対しては限られた効果があります。この種の紙はアルカリ・バッファーをほとんど吸収せず、表面にはフィルムと同様にアルカリ性物質が薄く残留します。この表面の層は拭き取ることができますし、それでも紙にはわずかにアルカリ・バッファーが残るでしょう。


8. 紙の黄変を止められますか?
黄変をとめることはできません。新聞紙のように光や酸素の影響を受けるリグニンなどの化学的不純物を含有している場合、これらの紙は時間経過と共に黄変する傾向があります。しかしブックキーパー脱酸法では、他の脱酸処理のように黄変色化が著しく進行することはありません。


9. pHが上昇することでアルカリ加水分解を引き起こすことがありますか?
ありません。酸化マグネシウムの使用によって上昇するpHは最大で10.4です。この値は紙の構造を弱めるのに必要な値よりずっと低い値です。温度が常温よりも高く、よりpHが高い場合、液体としての水が過剰に存在するとアルカリ加水分解が生じます。


10. 危険で有害なことがありますか?
ブックキーパー脱酸プロセスで使用する薬剤に危険物、毒物および引火性を持つものは含まれていません。処理液は臭気を発することなく気化し、特別な排気設備も必要とせず、通常の換気設備がある場所で使用できます。


11. その他のテストは予定されていますか?
プリザベーション・テクノロジー社は脱酸処理に関する継続的な研究の実施および支援を約束しています。現在、弊社は独立機関による研究のスポンサーとなり、汚染環境における紙の劣化、革、没食子酸鉄インク(iron-gall ink)、織物および美術工芸品の劣化原因、可変恒温強制劣化テスト、紙力強化への即効性、美術作品への即効性を調査、研究しています。これらの研究またはその他の研究について詳細をお知りになりたい場合は、弊社までご連絡ください。